会長あいさつ

高知化学会 第10代会長
小廣和哉
Kazuya,Kobiro
高知工科大学環境理工学群
教授

連続と不連続

高知化学会会長 小廣和哉 

  本年度より高知化学会会長を拝命いたしました小廣和哉でございます。37年の歴史ある本会の会長に就任いたしましたこと、重責に身の引き締まる思いです。会員の皆さまのご支援、ご協力のもと、責務を全うするべく、全力を傾注する覚悟です。よろしくお願い申し上げます。
 コロナ、コロナ、の大合唱の中、2022年度がスタートしました。コロナ禍はこれまで当たり前と思っていた日常が、実はそうではないということを、痛いほど我々に思い知らせてくれました。教育現場に身を置く立場からは、何とも思わず繰り返していた授業・実習、試験、セミナー、論文審査会、さらには、毎年の各種行事、入学式、新入生歓迎会、忘年会、新年会、卒業式等々、これらを以前の様に行えなくなって初めて対面することの「贅沢さ」を痛感しました。また、留学生の来日や学会活動にも大きな影響が出ています。数えだせば切りがありません。企業の皆様におかれましても、大変ご苦労されていると思います。
 さて、ご存じの様に、化学は物質の「静的な構造」と「動的な変化」を明らかにする学問です。言い換えると、時間とともに移ろうことの意味を、物質を通じて表現する学問であると言えます。その意味で、「連続的」な変化はとても大切です。昨日の結果と今日の結果は「連続」であるべきです。それが再現性であり、科学であり、工学です。また「連続的」な変化は予測可能という意味で安定であり安心です。これまでの知識や経験から、こうなるであろうと予測したことがその通りに起こる、これは特に生産現場においては極めて重要なことです。しかし、時折、予想したこととは全く異なる結果すなわち「不連続」に遭遇することがあります。たいていの場合、失敗ととらえその理由を考えます。大学で行われるような小スケールの研究とは異なり、生産現場では重大事です。しばしば起こるこの「不連続」な現象は、研究の観点からは、何か条件を間違えたあるいは「なれ」に伴う不注意が理由かもしれません。いつもの様にやっているつもりでも、何かが微妙に違っていたのでしょう。しかし、前回とは異なる結果の出現すなわち「不連続」現象は、これまで誰も全く経験したことのない新たな事象に幸運にも遭遇していることを意味しているかも知れません。人知を超えた何かに出くわしたということです。ビッグチャンスの到来です。
 コロナウイルス蔓延あるいは不安定な世界情勢という不透明で不連続な時代ではありますが、これをキッカケと捉え、「不連続」すなわち「斬新で独創的な化学」が高知から生まれることを期待します。